It is a bazooka to you who love!!










「いつもこうして来てくれるのは嬉しいけどさ」


恋人っていないの?


ロシアの問いに、俺は困ったように返す。
「……お兄さんは皆の恋人だからね。つまり固定の人がいないの。分かる?」
「理解できないなー。君のことだもの、一人や二人はいると思ったんだけどな。」

正直、どの口がそんなこと言うの、って言いたい。
だって、お兄さんが好きなのはロシア、お前だけなんだもの。





けれど、好きだよといくら伝えても伝えてもお前は「ありがとう、冗談でも嬉しいよ」
なんだもの。どれだけお前に愛してるを伝えても、本当のお前には全く届かない。
だからいつか、本当のお前に俺の気持ちを伝えられるように、こうして時折お前の家に遊びに行くってわけ。
そうして、俺は特製の手料理を振る舞ってやる。そのことにはいつも、素直にロシアは喜ぶ。


「美味しくて綺麗な料理は出来るし、女性も君のこと放っておかないと思うんだけどな」
「じゃあロシアはどうなの?ロシアはお兄さんのこと、気にしてくれる?」
「まあ友達としてはねー」

がっくり。

ロシアにとって俺は「友達」それ以上それ以下の存在ではないらしい。
まあイギリスやアメリカみたいに友達というより目の敵にされてるよりは、格段にいいけど。
「お兄さんが一番好きなのはロシアなんだけどなー」
「ふふ、ありがと。ほらそれよりも、食べようよ」
何それ、お兄さんの愛より料理なの?嬉しくもあるけど複雑でもあるよロシア!
とはいえ、折角お兄さんがロシアの為に腕を振るった料理なのだ。一旦お喋りという名の愛の囁きは置いておいて、頂きます。

うん、おいしい。ロシアもおいしそうに食べてくれている。
けれど。



「…ねぇフランス君」
「うん?なあにロシア」
「あのさ。…こうして時々僕の家に来てくれるのは嬉しいけどさ……僕、君に迷惑かけてるんじゃない?」
その言葉に俺は思わず笑顔を失ったまま、ロシアの顔を見つめた。




「…なんだよそれ」
「え、」
「俺、確かに愛はほいほい振りまくかもしれないけどな……普通は友人でもこんなこと、しねえよ!」

他人の家で料理をするのは、余程お願いされた時か、大掛かりなパーティがある時くらいだ。
第一、他人の家の道具は、使い慣れない。しかしロシアは、それを分かっていて、なるべくフランス製のものを取り入れてくれていた。
そのことも気付いていたからこそ。
ぎゅ、とフォークを握った拳に力が籠った。フォークはぎしりと悲鳴を上げる。 
「フ、フランスくん……?」
ロシアが微かに怯えた様な目つきになる。その様子に、俺ははっとなった。

好きな子にむきになるなんて、餓鬼か俺は。俺は居住まいを正した。 「……ごめんな、ロシア」
「ううん、…僕、今すごく失礼なこと…言っちゃったよね」
落ち着きを取り戻した俺に、ロシアもどこか沈み込む。
「いいんだ。そう思ってたなら…改めて、お前に伝えるよ」
「え?」
俺は真っ直ぐに、ロシアの頬を両手で包み込み、真っ直ぐに見つめ合う。
ロシアのアメジストの瞳はどこまでも澄んでいて、流石のお兄さんも吸い込まれてしまいそうだ。

「俺は、お前が好き。世界で一番、愛してる」
「嘘……」
ぽろりと声が零れ、開いた唇にキスをする。
「嘘なんかじゃない。お兄さん、お前に惚れちゃったから…だから、お前の為だけにこうして料理を作るの」
分かる?と問えばロシアはふるふると首を振る。
「嘘だよ。だってフランス君は、誰にでも優しくて……だから、こんな僕のことも、」
「あのさロシア」
びく、と大きな肩が震える。

「お兄さん、実は愛は簡単に囁いても、こんな夜に料理を作りに来るのは…過去にもお前だけなんだよ」
「え……?」
「夜はやっぱり、一人で食べるより二人で食べた方がいいでしょ?」
それにね、お兄さん、お前の家の温かな家の明かりを見るのが好きなんだから。
お兄さんの家とはまた違った素朴な美しさが、お前そのものみたいで堪らなく愛おしく映るんだ。

ロシアはやはりぽかんとしたまま、微動だにしなかった。
「それに…いつか、本当のお前が、顔を覗かせてくれるんじゃないか、ってね」
まああわよくば、なんて下心が潜んでいるのも否定はできないけどさ。


「フランスくんて……本当、ずるい」
「だって、それだけお前を愛しちゃったんだもん」
許してよロシア、そう耳元で囁けばロシアはぴくんと震えた。
「だからね?こんなお兄さんのことも、愛してほしいな。ロシア」


その甘い響きに、ロシアは一言だけ、答えた。









「覚悟しておいて」





















End

初めにアップした仏露が暗めだったので、やっぱりこの二人はほのぼのにならないとーって考えて
こんな話が出来あがりました
いや、何か話のネタないかなーってついったで診断を繰り返してたら、なんか兄ちゃんがどうしてもろたまをモノにしたい!
みたいなネタばかり飛び出したばっかりに。強引(?気味な兄ちゃんができあがりましたとそういうわけで。

彼を落とすのも愛するのも命がけ!
2013,8,22






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