二人揃って戦力万倍



「……くっ…!」


雨が、顔を洗い流していく様に滑り落ちてゆく。
馬が、思う様に操れない。

何より、周りの状況が思う様に見渡せない。
辺りは、凄い雨と気温の変化による霧も出始めている。
これでは、騎士として主君を護る事すらも出来ない。


激しい雨の所為で目もまともに開ける事が出来ず、槍を振るう事さえ出来なかった。
徐々に、焦りが募ってゆくだけで。


「………!」

「うぉぉぉっ!!」

突然目の前からなのか、剣をまっすぐに此方に斬り掛ってくる相手。
何とか盾でその攻撃を防ぐも、このままでは自分も拙いと己の感覚が教えていた。




一人で戦うという事はこういう事なのか、とアレンはその時初めて実感する。



すごく不安で、動いている自身の体も不安定。
いつもなら、傍に居てくれる奴が居た。
あいつに負けたくはない、そんな気持ちもあって、自分は前に進み続けた。
あいつが居るから後方は大丈夫、そう分かっていて、前に進む事が出来た。







「………うらぁぁっ!!」



「!!」





反応が一瞬、遅れてしまった。
間に、合わない。


――ああ、この後、待っているものは何だろう?




もう槍を繰り出す手もほとんど止まって、盾を付き出そうとしても動かなくて。
本当に、こんな所でやられるのか、と思った。

震えが、全身に走る気がした。
弱い電流が、全身を駆け巡る様に。





…きっとこれが、 「怖さ」 ということ。












咄嗟に目を瞑った。
けれど、痛みは感じなかった。


…変わりに、






「………アレン!!」




力強い、自分を呼ぶ声。
同時に、目の前の敵の喉元に手槍が刺さり、相手は吹っ飛ばされた。


ああ、あいつだ。
そう思った途端に、全身に再び熱が廻ってくる。
止まっていた、何かが自分の中で動き出す感覚。
もう一度槍を力強く握り締める事が出来た。
盾を持つ手もふっと重みが取れたかの様に軽く感じる。

見慣れたエメラルドグリーンの髪が、揺れた。


「平気か、アレン」
「……ああ、お前が来てくれたお陰でな」

…だから、素直に言う事が出来た。
普段ならば、少し曲がった答えを出していただろう。

「…ロイ様達は?」
「ああ、あちらにいらっしゃる」
「そうか」
「戻ろう」
そう言って、彼は来た道を振り返る。






「ランス」






「何だ?」

「お前が居てくれて、良かった」
「……当たり前だ」

そう言って、お互いに笑い合う。すると、前方で敵の声がした。



「こうしてはいられないな、急ごう」
「おう!」


二人は勢い良く、駆け出した。
もう、この雨など気にする事もなく。








そして、隣に居てくれる彼の存在が、
これ程力強く、頼れるものだという事を、



アレンは、改めて感じる事が出来た。











End


アレンは一人だといわゆる「突撃バカ」ですが、ランスが居るとそれがガラッと変わるんですよね.
ランスが居るからこそ、本領発揮出来る奴なんだと…いや、ランスもそうだと思いますが.
だからこの二人は他と支援が組ませられないんです......!
それって裏返すとお互い無しじゃ頼れないっていう(ry 2010,7,10



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